アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』を読了

アゴタ・クリストフの「『悪童日記』三部作」のうち、二冊 未分類

先週、アゴタ・クリストフの『悪童日記』を読み、今日はその続編の『ふたりの証拠』を読みました。

作品名、作家名ともにどこかで見た記憶はあったのですが、詳しくは知らず、これまで手に取ったことはありませんでした。

読むことになったきっかけは、8月に亡くなられた元資生堂名誉会長の福原義春氏が、著書で紹介していたことです。

(作者は作品中で明示していませんが、)第二次世界大戦下のハンガリーの田舎町が舞台となっており、そのなかでの双子の少年たちの生活が綴られていきます。

簡潔な文体でどんどん話が進んでいくのですぐに読めてしまうのですが、濃厚です。

『悪童日記』を読み、先が気になったので、続編の『ふたりの証拠』にも手を出した次第です。

『ふたりの証拠』にもさらに続編(『第三の嘘』)があり、これらは「『悪童日記』三部作」と呼ばれているようです。

最近は中古でしか出回っていない本を読むことが増えているのですが、この三部作も(おそらく)中古でしか手に入りません。

『悪童日記』の方を高く評価するレビューなどを目にしましたが、わたし個人としては、『ふたりの証拠』の方により強く引き込まれました。『悪童日記』が思春期以前までの双子を描いているのに対し、『ふたりの証拠』の方は思春期以降の双子(のほとんど片方だけ)を描いており、読んでいる自分自身が共感しやすい点が多かったからでしょうか。

ペテールは言う。

「われわれは皆、それぞれの人生のなかでひとつの致命的な誤りを犯すのさ。そして、そのことに気づくのは、取り返しのつかないことがすでに起こってしまってからなんだ」

アゴタ・クリストフ(堀茂樹訳)『ふたりの証拠』1991年、早川書房、p.203

相変わらず、簡潔で、速いスピードで時間が経過していくのですが、それぞれの登場人物たちのいろいろな側面・年の取り方・生き方・死に方などに、考えさせられるものがあります。

ガブリエル・ガルシア・マルケスの『百年の孤独』を読んだのはずっと前なのですが、長い時間の経過のなかで展開されていくストーリーが好きなようです。

『悪童日記』の方は、「まだ続きがある」と感じさせる終わり方でしたが、『ふたりの証拠』の方は、完結と言われても不自然さを感じない終わり方だったように思います。

自分のなかでの文学作品の比較は難しい(ある文学作品に触れると、ほかの文学作品の感触を忘れてしまう)のですが、作品・作家ともに、お気に入りになりました。

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