想像していた以上にエモかった…閉塞した視野に光を与え、飲食店経営等のヒントも得られる本:池田達也さん『しょぼい喫茶店の本』

読書

池田達也さん著『しょぼい喫茶店の本』が一昨日届き、すぐに開いて読み始め、一気に読み終えました。

延々と人の顔色をうかがい続ける。

自分で自分の評価ができない。

自分がこの場にいていいのか、常に誰かに許しを乞うている。

自分はちゃんとしているつもりでも、誰かの機嫌を損ねてしまっているかもしれない。じゃあ自分はもっとちゃんとしないと。もっとしっかり演じないと。もっともっと本当の自分を捨てて、だめな自分を見せないようにしなければ。そんな悪循環をどのバイト先でも繰り返した。働けば働くほど、本当の自分はだめなやつなんだという気持ちが強くなった。そんな気持ちが溢れてしまうと、パタッとバイトを辞めてしまう。そして、辞めてしまったことで、より一層自分はだめなやつなんだという気持ちが増していく。

だから、僕は働きたくなかった。──(pp.7-8)

というように、赤裸々な気持ちと冷静な分析が、共感しやすい文体で綴られていました。

この感覚は非常によくわかる、共感するという人は多いのではないでしょうか?もしこのような感覚を自分も感じつつモヤモヤした毎日を送っていたり、閉塞感の中で生きているという人がいるとしたら、この本はそんな閉塞しがちな視野に光を注いでくれるかも知れません。

しょぼい喫茶店ができるまでの経緯はTwitterでちらちらと拝見してはいたのですが、そこからは見えなかった池田さんの感じたこと・考えたことや、実際に動かれたことなどが綴られていました。

自分が深いところで感じていることや抱えていることは、言葉にするのが難しいものです。言葉にしようとしても、無意識にはぐらかしてしまったり、過剰に装飾・美化してしまったりして、自分自身が向き合うことを回避してしまいがちだと思います。しかし池田さんの文章はその部分に向き合い、ストレートな言葉で語りかけてきました。池田さんの経験を綴った文章を読む中で、自分自身が放っておいた感情に気付かされ、共感するという体験をしました。

実際に店舗を開くまでの経緯ももちろんですが、店舗を開いてから出会った壁や、それらをどう工夫して乗り越えたのか、どんな気持ちで仕事をされているのか…といったことが書かれており、気の持ち方やほかの人たちとの関わり方、飲食店のはじめ方など、いろいろな観点から参考になるものが多いと感じました。

私自身は、就職活動にモヤモヤとしたものを感じつつもほかの選択肢を見いだすこともなく、何とか内定をもらった企業を1カ月で辞めたという経験があります。その後も複数社で働きましたが、今はフリーランスに居心地の良さを感じています。

小学校⇒中学校⇒高校⇒大学と、学校という環境の中で過ごしてきて、就職活動⇒就職というレールから外れるのが難しい(自分の考え方として)、かといってレールに乗るのもきつい、あるいは乗れない、という状況で苦しんでいる人がいるとしたら、ぜひ手に取っていただきたい本です。

就職して心地よく生きていける人は就職して生きていけばいい。しかし、就職して心地よく生きていけない人にも、自分に合った生き方を模索する可能性は開かれていることを教えてくれると思います。

えらいてんちょうさんの『しょぼい起業で生きていく』や、その後の三部作(『しょぼ婚のすすめ』『静止力』、『ネットゲリラ戦術』)なども一緒に読めば、いろいろな可能性に目が開き、自分にとっての心地よい生き方を考え直す機会になるかも知れません。

生き方や感じ方は人それぞれ違いますが、こんな風に感じ、考え、生きている人がいるという事実を知ることが、自分自身の大きな勇気につながると思いました。

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